妊娠中・授乳中の乳がんは、患者さんにとっても医療者にとっても、もっとも判断が難しい状況のひとつです。
「お腹の赤ちゃんは大丈夫?」「治療と赤ちゃん、どっちを優先するの?」
頭の中がぐちゃぐちゃになるのは当然です。
ここでは、判断のポイントと実際の流れを整理します。
妊娠中の乳がんが見つかる頻度
妊娠1000例に1例程度。決して多くはありませんが、ゼロではない頻度です。
ホルモン環境の変化で乳房が張るため、しこりが見つけにくく、発見が遅れがちなのが特徴です。
検査は何ができる?
「妊娠中に検査して大丈夫?」という疑問は当然です。次のように整理されます。
妊娠中に可能な検査
- 乳腺エコー:問題なし(被ばくゼロ)
- マンモグラフィ:腹部を遮蔽すれば可能
- 針生検:局所麻酔で可能
- 造影MRI:原則控える(造影剤が胎盤通過)
- CT・PET:基本的に控える
- 骨シンチ:基本的に控える
エコーと針生検が、妊娠中の検査の中心になります。
治療:時期によって変わる
妊娠時期によって、できる治療と控える治療が変わります。
妊娠初期(1〜3ヶ月)
- 手術:可能(局所麻酔・短時間なら)
- 抗がん剤:原則控える(胎児への影響大)
- 放射線:控える
- ホルモン療法:控える(特にタモキシフェン)
妊娠中期〜後期(4ヶ月以降)
- 手術:可能
- 抗がん剤:胎児の主要臓器形成が終わっているので、一部の抗がん剤は使える
- 放射線:基本的には出産後
- ホルモン療法:出産後
出産後・授乳中
- 通常の乳がん治療がほぼすべて可能
- 授乳は治療によっては中止が必要
治療しながら出産する
実は、妊娠中期以降は、
- 手術
- 一部の抗がん剤
- 必要に応じてホルモン関連治療
を行いながら、出産時期に向けて準備していくことが可能です。
最終的には、出産後(または妊娠後期)に放射線治療・残りの治療を行います。
「妊娠と乳がん」は、世界中の患者さん・医療者が経験してきたパターンで、知見は積み重なってきているんだ。あきらめずに、まず専門の医師に相談してね。
授乳中の乳がん
授乳中に見つかる乳がん(授乳期乳がん)は、
- 乳房が張っているので、しこりが触れにくい
- 乳腺炎との見分けが難しい
- 「乳腺炎が治らない」が乳がんのサインのことも
- 発見時にステージが進んでいることが多い
授乳中に「片方だけ赤くなる」「治らないしこり」があれば、迷わず受診を。