「80歳でも手術するの?」
「もう年だから、治療しなくてもいいかな」
高齢になってからの乳がん診断は、若い世代とはまた違った悩みがあります。
ここでは、高齢者の乳がん治療をどう考えるか、その軸を整理します。
高齢者の乳がんの特徴
高齢者乳がんのポイント
- ホルモン陽性が多い(年齢とともに比率上がる)
- 増殖が比較的ゆっくり
- 反対側の乳がんを経験することもある
- 全身状態(体力・併存疾患)の個人差が大きい
- 認知機能の問題で治療判断が難しいことも
「年齢」より「全身状態」で決める
治療をどこまでやるかを決めるとき、いちばん大事なのは実年齢ではなく、全身状態です。
全身状態の評価ポイント
- 自分の身の回りのことができるか(ADL)
- 他に重い病気はないか(心不全・腎不全・呼吸器など)
- 認知機能は保たれているか
- 体力・歩行能力
- ご家族のサポート体制
85歳でも畑仕事をしている方と、70歳でもいくつもの病気を抱えている方では、できる治療も違います。
高齢者の治療の考え方
手術
手術は、原則として可能なら行います。乳がんの場合、手術自体の負担は比較的軽く、80歳・90歳でも問題なく受けられる方は多いです。
ただし、術後の入院や回復に時間がかかるので、家族のサポートが必要なことも。
放射線
部分切除後の放射線治療は、70歳以上では「省略可」とされることが増えています。再発リスクが少し上がる代わりに、5〜6週間の通院負担を避けられます。
抗がん剤
抗がん剤は、体への負担が大きいので、慎重に検討します。
- ステージ・サブタイプ
- 抗がん剤で延びる寿命の見込み
- 副作用のリスク
- 残りの人生で何を大事にしたいか
これらを総合して、本人と家族と相談して決めます。
ホルモン療法
ホルモン療法は、副作用が比較的軽いので、高齢でも続けやすい治療です。タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬を、5〜10年使うことが多いです。
ただし、骨粗鬆症のリスクがあるアロマターゼ阻害薬は、骨折歴のある方では注意が必要です。
「治療しない」という選択も尊重される
ある程度の年齢で、ご本人が「もう治療はしないで、穏やかに過ごしたい」と希望される場合、その選択も尊重されます。
これは「あきらめ」ではなく、ご本人の人生観に基づいた選択肢のひとつです。
認知機能が低下している場合
認知症が進んでいる方の場合、本人の意思確認が難しいことがあります。
そんなときは、
- ご家族との十分な話し合い
- これまでの本人の価値観の確認
- 主治医・看護師・介護スタッフとの連携
を重ねて、「本人ならどう考えただろう」を軸に決めていきます。
高齢者の乳がん治療は、「治す」よりも「うまく付き合う」「穏やかに過ごす」という視点が大事になることが多い。
ご本人の価値観を、家族や医療者で共有することが、いちばんの軸になるんだ。