脱毛のメカニズムと頭皮ケア

Watercolor still life: a soft scarf, a stylish hat, and a wi

抗がん剤の副作用のなかで、もっとも目に見えて心の負担が大きいのが脱毛です。

でも、髪はほとんどの場合また生えてきますし、備え方や和らげ方も分かってきています。この記事では、「なぜ・いつ抜けるのか」「元に戻るのか」から、頭皮冷却による予防、頭皮や眉・まつ毛のケアまで、ブレきゃん流に整理していきます。

なぜ抜けるのか

抗がん剤は、増えるスピードが速い細胞を狙います。

髪の毛は、毛根の根元にある毛母細胞が活発に分裂しているおかげで伸びています。この細胞が抗がん剤に巻き込まれて、髪の毛を作り続けることができなくなる→抜ける、という仕組み。

薬による脱毛のパターン

抗がん剤と脱毛の傾向

    • ほぼ確実に脱毛:EC/AC療法、タキサン系(ドセタキセル・パクリタキセル)
    • かなり脱毛:エリブリン(ハラヴェン)
    • 部分的:カペシタビン(ゼローダ)
    • ほぼなし:ホルモン療法、抗HER2薬、フルベストラント(フェソロデックス)

乳がんでよく使うアンスラサイクリン系(AC・EC療法)やタキサン系は、特に脱毛が起こりやすい薬です。最近の調査では、90%以上の方で、頭髪の8割以上が抜けたと報告されています。

いつから抜ける?

通常、抗がん剤投与から2〜3週間後から抜け始めます。

「最初の点滴の翌日に全部抜けた」ということは、ほぼありません。少しずつ、束で抜けるようになっていく感じです。

どこが抜ける?

頭髪だけでなく、

  • 眉毛、まつ毛
  • 体毛(脇・腕・足)
  • 陰毛

全身の体毛が抜けることがあります。鼻毛が抜けると鼻水が出やすくなる、まつ毛がないと目にゴミが入りやすい、といった生活上の問題も出ます。眉やまつ毛も、8割以上抜ける方が6割ほどいる一方、薄くなる程度ですむ方もいます。

元に戻る?

はい。ほとんどの場合、元に戻ります。

  • 治療終了後、早い人は1ヶ月・平均3.4ヶ月ごろから生え始める
  • ショートの長さにそろうまで半年〜1年
  • 初期治療でウィッグを使う期間は、1〜2年ほどの方が多い

ただし、

  • 質感が変わることがある(くせ毛になる、逆にまっすぐになる)・色や太さが変わることも。多くは時間とともに元に戻る
  • 中には回復に時間がかかる方や、薄毛のまま戻りにくい方もいる
  • 一部の薬(タキサン系の高用量)では、ごくまれに「持続性脱毛」がある

頭皮ケアのコツ

抜けている間も、かゆみやにおいがない程度に洗って、頭皮を清潔に保つのが基本です。毎日洗わなければならないわけではありません。頭皮が敏感になっていることもあるので、心地よく感じる範囲で大丈夫です。

そのほかのポイント

    • シャンプーは低刺激(アミノ酸系など)でもよいが、“これでなければダメ”という製品はない。今まで使っていたもので頭皮の調子がよければ、無理に変えなくてよい
    • 濡れた髪は傷みやすいので、濡れたまま寝ない(枕の摩擦で傷みます)
    • 直射日光を避ける(帽子・スカーフ)
    • 寝るときの摩擦に注意(ナイトキャップ)

パーマ・カラーはいつから?

パーマもカラーも、髪や頭皮への刺激があるので、抗がん剤治療中や、脱毛して髪が生えそろう前は避けるのが基本です。治療が終わって髪が十分に伸びてから、頭皮の状態を見て担当医に相談のうえ再開しましょう。

最近のガイドライン(アピアランスケアガイドライン2021年版)では、QOL(生活の質)の観点から、次の条件を満たせば、再発毛したあとのパーマ・カラーを頭ごなしに止めることはしない、という考え方になっています。

再開するときの条件(パーマ・カラー共通)

    • 頭皮・顔・首すじなどに、傷・湿疹・皮膚炎がない
    • 過去に、パーマ剤や染毛剤でアレルギー(かぶれ)を起こしたことがない
    • 施術に適した長さまで、髪が十分に伸びている
    • 頭皮に薬剤がつかないよう、技術力のある理美容師にお願いする(頭皮から1〜2cm離して施術)
    • カラーの場合は、毎回パッチテストをして問題ないことを確認する

頭皮冷却で脱毛を減らす方法

「頭皮冷却(とうひれいきゃく)で、抗がん剤の脱毛を予防できるって本当?」とよく聞かれます。答えは一部本当です。

専用のキャップで頭皮を約19℃に冷やしながら抗がん剤を行うと、半分〜3人に2人くらいの方で、脱毛を「半分未満」に抑えられる(ウィッグがいらないくらい)と報告されています。つまり「脱毛をゼロにする」ではなく、「重い脱毛を減らす」方法です。

どういうしくみ?

とてもシンプルです。

  • 冷やすと頭皮の血管が細くなる(収縮する)→ 頭皮に届く抗がん剤が少なくなる
  • 冷やすと細胞の分裂スピードが落ちる →「分裂の速い細胞を攻撃する」抗がん剤の効きが、毛母細胞ではやわらぐ

乳がんでは、効きにくい組み合わせがある

ここが大事なところ。乳がんでよく使うアンスラサイクリン系(AC療法・EC療法)では、頭皮冷却の効果が得られにくいとされています。AC/EC → ドセタキセル/パクリタキセル、という流れの治療では、冷却をしていても脱毛してしまう方が多いのが実際です。

ブレきゃん!

頭皮冷却は「やらなきゃいけないもの」じゃないよ。少しでも脱毛を減らしたい人のための選択肢のひとつ。やってもやらなくても、あなたが選んだほうが正解だからね。

「ミノキシジルは効く?」

市販の育毛剤に使われるミノキシジルについても、よく質問があります。抗がん剤による脱毛と、ホルモン療法(内分泌療法)による薄毛とで、少し事情が違います。

  • 抗がん剤の脱毛予防:防ぐ効果は、今のところないと考えられています
  • 抗がん剤治療後の生え直し:2〜5%のミノキシジル外用が生え直しを早める可能性はありますが、はっきり効果があるとまでは言えないのが現状です
  • ホルモン療法による薄毛:ミノキシジル外用の使用は否定されていません。高いエビデンスはないものの、女性の薄毛と似たしくみで起こるため、試す価値はあるとされています

いずれも、自己判断で使う前に担当医に相談してください。

眉・まつ毛が抜けたとき

  • 眉:位置がわかりにくくなるので、顔とのバランスを見ながら描きます。アイブロー(眉ずみ)はウォータープルーフ(防水)だと汗や皮脂でも落ちにくく、色はウィッグに合わせると自然です
  • まつ毛:抜けると目にゴミが入りやすいので、メガネやファッショングラスでカバーを。つけまつ毛を使うときは、接着剤のパッチテストを忘れずに
  • 治療が終わると眉・まつ毛も生えてきます。まつ毛が戻りにくいときは、まつ毛貧毛症の治療薬(グラッシュビスタ)もあります(自由診療)。気になれば医師に相談を

ウィッグ・帽子で心地よく

脱毛に備えて、治療が始まる前にウィッグを準備しておくと安心です。すぐ使える既製品と、できあがるまで1ヶ月ほどかかるオーダー品があるので、脱毛が始まる時期に合わせて準備しましょう。帽子・バンダナ・つけ毛も、敏感になった頭皮を守りながら楽に過ごすのに役立ちます。

医療用ウィッグには、2015年に品質・安全性の基準(JIS)が定められています。「医療用」と書かれた粗悪品を避ける目安にしてください。

まとめ

※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状、検査結果、体調、価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。

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