「脇のリンパ節に転移があります」
「センチネルリンパ節生検をします」
「腋窩郭清(えきかかくせい)をします」
乳がんの説明では、本当にたくさん「リンパ節」という言葉が出てきます。でも、そもそもリンパ節って何なのか、ちゃんと教わる機会は意外と少ないものです。
ここでは、乳がんを理解するうえで欠かせない「リンパ節」について、基本からゆっくり見ていきましょう。
リンパ管は「体の排水管」、リンパ節はその関所
リンパ管は、ひとことで言うと**体の「排水管」**です。
体のすみずみには、血管とは別に、この細い排水管がたくさん走っていて、組織から染み出してきた水分や老廃物、はぐれたウイルスやがん細胞などを、せっせと回収しています。
そして、この排水管の途中、ところどころにあるのがリンパ節。だいたい大豆くらいの大きさで、首・脇の下・足の付け根など、体の各所にちらばっています。
リンパ節は、排水管の途中にある「関所」のような場所。排水を流すついでに、変なものが混ざっていないかをチェックしています。
ふだん、なじみがあるのは「風邪をひいたら首のリンパ節が腫れる」みたいな経験ではないでしょうか。あれは、体の中に入ってきたウイルスを関所で食い止めて、戦っているサインです。
乳房のリンパ液はどこに流れていくのか
ここからが本題です。
乳房から出てきたリンパ液は、ほぼ決まったルートを通って流れていきます。
そのうち、いちばん大事なのが脇の下のリンパ節(腋窩(えきか)リンパ節)です。
乳房から流れる主なリンパの行き先
- 脇の下のリンパ節(腋窩リンパ節):いちばん多くの乳房リンパが集まる
- 鎖骨の上下のリンパ節:腋窩のさらに上流
- 胸骨の裏のリンパ節(内胸リンパ節):胸の真ん中の奥
このうち、もっとも頻度が高く、また外科的に重要なのが「脇の下のリンパ節」です。
なぜ乳がんで「脇の下のリンパ節」が大事なのか
乳がんの細胞が、もし乳房を飛び出して旅に出るとしたら、最初の関所として立ち寄るのが脇の下のリンパ節です。
つまり、ここを調べれば、
- がん細胞が乳房から外に飛び出しているかどうか
- 飛び出している場合、その勢いがどのくらいか
が分かる、というわけです。
センチネルリンパ節という考え方
昔は、乳がんの手術といえば、脇の下のリンパ節を全部とってしまう(腋窩郭清)のが一般的でした。
でも、それだと術後にむくみ(リンパ浮腫)や肩の動かしにくさが出やすく、患者さんの負担が大きい。
そこで現代では、まず「最初に飛び込んでくるリンパ節」だけを取り出して調べる方法が主流になっています。これがセンチネルリンパ節生検です。
センチネルリンパ節を調べてみて、
- 転移なし → 残りのリンパ節は取らずに済む
- 転移あり → 状況に応じて、追加の処置(追加郭清・放射線など)を検討
という流れで判断します。
「リンパ節を全部取らなくて済むかも」というのは、患者さんの負担を大きく減らす革命的な進歩だったんだ。
リンパ節が「腫れている」と言われたら
検診や検査で「脇のリンパ節が少し腫れている」と言われると、どうしてもドキッとします。
でも、リンパ節が腫れる原因は、がん以外にもたくさんあります。
リンパ節が腫れる原因
- 風邪・喉の炎症などの感染症
- 虫刺され・けがの炎症
- 予防接種のあと(特にコロナワクチンの接種側)
- 乳腺炎などの乳房自体の炎症
- 自己免疫疾患
- がん(乳がん・血液のがんなど)
「腫れている=がん」では決してないので、いきなり最悪を想像せず、まずは主治医に相談してみてください。
リンパ節を取った後のケア
もし手術でリンパ節を取った場合は、その後のケアが大切になります。
特に多くのリンパ節を取った方は、リンパ液の流れが滞りやすくなり、腕がむくむ「リンパ浮腫(ふしゅ)」が起こることがあります。
予防のためのポイントを、簡単にまとめておきます。
リンパ浮腫を防ぐためのポイント
- 手術側の腕で重い物を持ちすぎない
- 手術側の腕で長時間の負荷(草むしり・力仕事)を避ける
- ケガや虫刺されに気をつける(感染がきっかけになる)
- 圧迫しすぎる服や時計を避ける
- 異変を感じたら早めに主治医・看護師に相談
詳しくは No.2015 腋窩郭清とリンパ浮腫 でも解説していきます。
まとめ
リンパ節という言葉は最初は難しく感じても、「体の関所」というイメージさえ持てば、ほとんどの説明は理解できるようになります。
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この記事に必要なイラスト
候補(必要に応じて1〜2枚):
- 乳房から脇の下のリンパ節へリンパ液が流れる経路の図(淡い水彩、文字なし)
- センチネルリンパ節の概念図(最初の関所のイメージ)
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