針生検や手術のあと、主治医から渡される「病理レポート」。
専門用語と数字が並んでいて、何が書かれているのかチンプンカンプン……という方も多いと思います。
ここでは、代表的な項目を一つずつ翻訳していきます。レポートを手元に置いて、照らし合わせながら読んでみてください。
① 組織型(Histological type)
がん細胞の見た目から判断した「タイプ」です。
代表的な組織型
- 浸潤性乳管癌(IDC):もっとも多い(70〜80%)
- 浸潤性小葉癌(ILC):2番目に多い
- 非浸潤性乳管癌(DCIS):ステージ0
- 非浸潤性小葉癌(LCIS):がんの「前段階」と見られる
- そのほかの「特殊型」(粘液癌・管状癌など)
詳しくは No.1017 乳がんの特殊型 をご覧ください。
② 浸潤の有無
「浸潤癌」か「非浸潤癌」か。ミルクの通り道(乳管)の壁を破って外に出ているかどうかの違いです。
詳しくは No.1003 浸潤癌と非浸潤癌 を。
③ ER(エストロゲン受容体)/PgR(プロゲステロン受容体)
女性ホルモンを「食べる口」があるかどうかの検査結果。
- 陽性(%で表示):ホルモンを栄養に育つタイプ→ホルモン療法が効く
- 陰性:ホルモンは関係ない
数字で「ER:90%」「PgR:60%」のように書かれることが多いです。陽性であれば、5〜10年のホルモン療法が治療の柱になります。
④ HER2
増殖シグナルを受け取る「アンテナ」の量です。
HER2の結果の見方
- 0:陰性
- 1+:陰性(HER2 lowに該当することがある)
- 2+:曖昧(FISH検査で再判定)
- 3+:陽性
HER2陽性の場合、抗HER2療法(ハーセプチンなど)が使えます。最近は「HER2 low」という分類も登場し、エンハーツ(T-DXd)の対象になります。
⑤ Ki-67
がん細胞のうち「いま増えようとしているもの」の割合。%で表示されます。
- 10%未満:ゆっくり増えるタイプ
- 10〜20%:中間
- 20%以上:比較的速い
- 30%以上:かなり速い
詳しくは No.1008 Ki-67 を。
⑥ 組織学的グレード
がん細胞の「顔つき」が、本来の細胞からどれくらい乱れているか。1〜3の3段階で、3がいちばん乱れているタイプです。
詳しくは No.1009 組織学的グレード を。
⑦ 脈管侵襲(vascular invasion / lymphatic invasion)
がん細胞が血管やリンパ管に入り込んでいるかどうか。
- なし(v0, ly0):入り込んでいない
- あり(v1, ly1):入り込んでいる
入り込んでいる方が、転移リスクがやや高い傾向。
⑧ 切除断端(surgical margin)
手術で取った組織の「端」にがんが残っていないかどうか。
- 陰性:端まできれいに取れた
- 陽性:端にがんが残っている
- close margin:端ぎりぎり
陽性や close margin の場合、追加切除や放射線で対応します。
⑨ リンパ節転移(針生検 / 手術後)
センチネルリンパ節や脇のリンパ節を調べて、転移があったかどうか。
- 転移なし(N0)
- 転移あり(N1, N2, N3):個数や場所で細かく分かれる
これがステージを決める「N」の部分になります。
⑩ 病理ステージ(pStage)
すべての情報を組み合わせて、最終的なステージが決まります。
- pT(しこりの大きさ)
- pN(リンパ節転移)
- pM(遠隔転移)
これらを組み合わせて、ステージⅠ〜Ⅳが決まります。
サブタイプは結果の総合
ER/PgR/HER2/Ki-67の組み合わせで、
- Luminal A型:ホルモン陽性HER2陰性、Ki-67低
- Luminal B型:ホルモン陽性HER2陰性、Ki-67高
- Luminal HER2型:ホルモン陽性HER2陽性
- HER2陽性(非ホルモン)型
- トリプルネガティブ
のサブタイプが決まります。これが治療方針の中心軸になります。
詳しくは No.1005 乳がんのサブタイプ を。