ERとPgR

乳がんでいちばん多いのが、ホルモン受容体陽性(ホルモン陽性)乳がんです。「ホルモン陽性」と呼ばれるのは、がん細胞が女性ホルモンを“食べる口”を持っているから。

その「口」が、ER(エストロゲン受容体)とPgR(プロゲステロン受容体)です。病理結果での表し方は施設によっていくつかあり、Allredスコア(オールレッド。0〜8点)、Jスコア、「ER 90%」のような陽性細胞の割合(%)などで示されます。表記は違っても、意味するのは「エストロゲンを食べる口がどれくらいあるか」です。このふたつ、似ているようで役割が違います。

ER(エストロゲン受容体)=エストロゲンを食べる口

がん細胞にある、エストロゲンを受け取るタンパク質(厳密には核の中にあります)。いわば、エストロゲンを食べる口です。

がん細胞がこの口でエストロゲンを食べると、「増殖期に入りなさい!」という命令を受け取り、どんどん増えていきます。

  • 陽性:1%以上の細胞でERが発現
  • 陰性:ER発現が1%未満
  • 高発現:50%以上、90%超など

ER陽性の乳がんは、エストロゲンを栄養に育つので、エストロゲンを断つ治療(ホルモン療法)がよく効きます。

PgR(プロゲステロン受容体)=口がちゃんと働いているサイン

PgRは、もうひとつの女性ホルモン「プロゲステロン」を受け取るタンパク質です。ただし、プロゲステロンはERのように直接「増えなさい」と命令するわけではなく、増殖を調節する(増やしたり、休ませたり)役割だと考えられています。

では、なぜPgRを調べるのでしょう?

ポイントは、ERがしっかり働いて増殖しているがん細胞ほど、PgRがたくさん作られるとわかっていることです。つまりPgRは、「エストロゲンを食べる口が、いま実際にちゃんと働いている」というサインなのです。

  • PgRが多い:エストロゲンを頼りに増えている可能性が高い → ホルモン療法が効きやすい
  • ERは多いのにPgRが少ない:口はあるけれど、あまり使っていない → エストロゲン以外の刺激で増えている可能性があり、ホルモン療法が効きにくいことがある

ERとPgRの組み合わせで、性質が変わる

同じ「ホルモン陽性」でも、ERとPgRの出かたの組み合わせで、がんの性質は少し変わってきます。

ERとPgRの組み合わせ

    • ER高・PgR高:エストロゲンをよく食べて、素直に増えるタイプ → ホルモン療法が効きやすいことが多い(典型的なルミナルA候補)
    • ER高・PgR低:食べる口はあるけれど、あまり食べていない → 女性ホルモン以外の増え方も持っている可能性があり、ホルモン療法が効きにくいことがある(ルミナルB候補)

こんなふうに、同じホルモン陽性乳がんでも、受容体の発現しだいで性質が異なるんですね。くわしいタイプ分けは No.1102 ルミナルAとB を。

まとめ

※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状、検査結果、体調、価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。

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